私が”福祉”の世界に入ったときは、”措置”という仕組みで動いている時代でした。
ちなみにWEBで”措置”を検索してみると、最初に出てくる説明は…「 事態に応じて必要な手続きをとること。取り計らって始末をつけること。」だそうです。
当時の福祉は、自分で行き先を決められない…。行政によって、「〇〇さんの障がいは◇◇、住所は▶▶なので、□□□入所施設に行ってください」と決められていたんです。必要だと思う事を、ある資源(施設)の中から選んで、手続きを取られてたんですね。
そんな時代から”契約”が主となり、様々なサービスが”福祉”と言われる領域にも広がり、高齢者だけでなく、障がい、児童の世界にもサービスが多様になって措置の時代よりは主体的に”選べる”ようになってきた…そんな時代の変遷を、その渦の中で体験してきました。
そんな20年の動きのなかで、”就労”に関する仕組みもアレコレ変わって、”就労支援センター””ナカポツ””就労移行支援”事業””定着支援事業”…様々な”支援機関”が仕組みとして誕生しました。今日はそんな仕組みの限界について、切り込んでみます。
就労を支える福祉サービス
”就労支援センター”と”ナカポツ”と言われる「障害者就業・生活支援センター」について、まずは簡単に解説。(地域や、自治体で、運用は若干違う事もあるので、大枠です)この2つが提供してくれることは大まか同じです。
違いはカバーしてる範囲です。”就労支援センター”は市区町…等の行政区で設置されていますが、ナカポツは国の施策なので、圏域と言われるちょっと広範囲なエリアをカバーしています。サポート内容の概略は…下記参照ください。
①障がいがある方が働くことに関して起こる、様々な困り事をサポートします。
業務に関することはもちろん、生活面で困ってる事が仕事に影響している場合には、生活についての相談もできます。
②会社側の話しも聞いてくれます
本人の話しだけでなく、企業側からの話も聞いて、必要な手立てを考えて対処方法を一緒に考えてくれます。
③実習の際の保険の手続き窓口
採用選考前に実習をして、本当に自分に合う職場なのかを確かめたい…ときに、支援機関を通じて加入できる”保険”がありますので、安心して実習に臨むことができます。
④一度登録すれば、更新不要!
登録するタイミングは、特別支援学校卒業時、就労移行支援卒業後3年のサポートが終わった時、中途で障がい者雇用で就活したとき等、人によって様々ですが、一度登録すると基本的に更新はありません。
ステキなサービス!!と思います。が、ここに”限界”があるんです。
担当100人
毎年、新卒の高校生が登録…移行支援事業利用者が増えて、就職する人が増えるという事は、3年後に登録者も増えていく。雇用率が上がり続けて、採用される人が増えるという事は…そして、更新不要で極端な話、永年定着支援が受けられる…。
登録者は増えるけど、卒業者はいない。そして、支援員が増員されることもなく(なんなら万年人材不足)拠点が増設されることもない…。
いや、普通に考えてパンクですよね。なので、1人の支援員が担当する人数が100人…とかになるんです。毎日誰かの定着支援に行ったとしても、次回は100日後です。その間に、新規登録者のインテークなどもあるわけで…。
新規登録まで2ヶ月…。
そんなマンパワー不足というのか…新規登録の面談まで2か月待ちという地域も…
怠っているわけでもなく、仕組み的に限界を感じるのはここです。そして、そんな現場の限界に追い打ちをかけるというか…いろんな事が支援機関の肩に…。
保険の利用条件
東京の例ではありますが…実習の際に使える保険があります。実習は採用選考前に行いますので、加入できる保険と保険料の補助は非常にありがたいです。
↑令和5年版ですが、参考に…。
しかし、条件は…「支援機関」からの申請が必須なんです。つまり、気になる会社での実習ができる!となっても、登録までに2ヶ月、その後保険の手続きに1週間…となると、なんだか、タイミングを逃しますよね…。
「支援機関ついてる人がいいですよ」というエージェント
さて、先に述べておきますが、エージェントを否定する意図ではありません。
ここで言いたいのは、最近、いろんな人事の方とお話しする中で、このアドバイスが人材紹介業の営業部隊の方々の流行の様だと感じています。
確かに、その側面もあると思います。しかし、その支援機関の支援員たちが、どんな思いと時間と心を砕いて、その役割を果たしているのか…そして、この現状を知っている、そのうえでのアドバイスであるなら、まぁ、そ~なんですねと少し納得はしないでもないですが…
では、”支援機関ついていた方がいい”の理由は何なんでしょうか??
困ったとき、問題があった場合に、支援機関に頼れるから??支援機関が何とかしてくれるはずだから??
もし、その理由だけで、「支援機関が付いている人がいい」というアドバイスを受けて、入職前に無理やり”支援者”を付けて採用しようとしているなら…、ちょっと落ち着いて考えてほしいのです。
厳しい事を言うようですが、支援機関(支援員)は、もしもの時を何でも解決するためのサービスではありません。エージェントを使って入職した後に起こる事をカバーする保険でもないのです。
”支援者がいた方がいい”本当の理由
誰かのアドバイスを聞ける準備がある、自分に向き合うことを受け入れた(ようとした)経験がある。
そうじゃない!!というご意見も、もっと他のご意見も沢山あると思いますが…これが、廣田の今のところの答えです。
一緒に働く仲間として、お互いに必要として、される関係であるのか、業務を円滑に進める基礎の想いの疎通ができるのか、業務指示ができる相手なのか、”違う”という指摘ができる相手なのか?それを受け入れてくれる(話し合える)素地があるのか…
同じ場所で働く人として、その関係性が成立するかどうかが知りたいはずなんです。
「支援者」と意思の疎通やアドバイスの受け入れをしてきた経験があるのか、その時どんな反応が起こって、どのように成長してきたのか…その軌跡がわかる人が”支援者”です。そんな”支援者”がいるかどうか…が大切な事であり、とってつけた”支援員という立場の人”が何人いてもあまり、意味がないと思っています。
激込みの季節
そして、更に…この10月~11月の時期は、新規登録で激込みの時期です。理由は雇用率が関係しているのですが、それはまた改めて。
「もしものトラブル解決」のために支援機関を付けようと思っていた企業の方には、本当の意味をご理解いただけたら嬉しいです。それにより、本当に必要な人に適切な時期とボリュームで福祉サービスを利用してもらう事が出来ます。
「初めて採用で、自分たちだけで…なんて不安」という場合は、弊社までご相談ください!少なくとも、2か月先なんてことにはなりません。
自社で採用する社員に対してのフォローアップを、自社で備えておく時代が来ています。
税の事は税理士さん、法の事は弁護士さん、…
障がい者雇用は”社会福祉士”にお任せください。